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白無垢綿帽子に憧れたアラサーのセルフ和装ソロウェディングレポート


by namino

筥迫を手作りする

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写真は私がもともと持っていた筥迫(はこせこ)。
姉が誕生日にプレゼントしてくれたお気に入りのものだ。

花嫁の衣装には、現代ではあまり使わない小物が使われている。
今回のメインの筥迫や、次回以降で紹介する予定の抱え帯や丸ぐけの帯締め、懐剣などは、普段の和装ではあまり使われない小物だ。
花嫁衣装は伝統の衣装なので、古くから伝わるこれらの小物が使われる……みたいな説明はよく見かけるが、どこか定型句っぽいというか、宣伝文句的というか、「そういうことになっている」みたいな匂いを感じて、個人的にはどうかなあと思う部分もある。
(江戸期以降の風習を「わりと最近の発祥なんだな」と感じる人間の意見である)

ともあれ、筥迫がそこそこ歴史のある装身具であるということは、どうもそうらしい。
原型は懐紙入れだったと聞いたことがあるが、聞きかじりの知識ばかりで、詳しいことは私も知らない。七五三の着物にも使われるので、案外みんな知らない間に使った経験があるものかもしれない。

筥迫については、私なんかの説明よりも、『筥迫工房』さんのHPと、そのブログに行くほうがよほど勉強になる。教本も販売されているので、本気の人はぜひそちらに行ってほしい。


調べてないけど、ハンドメイドの作家もけっこういるんじゃないだろうか。たぶん。


この筥迫や、抱え帯や丸ぐけの帯締めなんかがセットになったものが、花嫁セットみたいな名前で売られていて、中古のものを私もヤフオクで見かけたが、人気が高かったので競り落とすのを諦めた。
私が買うよりは、もっと必要としている人のほうに回るほうが良いなと思って。

お手本もあることだし、手作りすることにした。

私は教本を見て何かを作ることが基本的に出来ないタイプだ。
作り方は自己流なので、あまり信用せずに、変だなと思ったらご自身の判断で変更してほしい。
パイピングとか、刺繍とか、そういう難しいことは、出来ないのでしていない。
かなり簡易版の筥迫だ。



【材料と道具】
・布(表地用と裏地用を用意する)
・厚紙(お菓子の箱やティッシュ箱の底など)
・コピー用紙
・キルト芯(百均)
・レース糸(百均)
・紐(レース糸を流用できないこともないが、もっと太い方がいい)
・布用接着剤(『布上手』という商品を使った)
・両面テープ
・スティックのり
・カッター
・はさみ
・カッティングマット
・金属定規と普通の定規(カッター裁断用と線引くとき用)
・シャーペン
・チャコ
・アイロン
・洗濯ばさみ  など


ほとんどがハサミで切って接着剤で貼る作業になるので、裁縫っぽさはない。工作に近い。
細かい作業が多くて飽きるし、手も接着剤でベタベタになるしので、何日かに分けてちまちま作るのがいいと思う。乾かす時間をおいたほうが、接着剤も落ち着く。
ちなみに私は、日を空けながら10日くらいかけて作った。(飽き性)

●最初に切る厚紙の寸法
(そのうちpdfかなんかで、もっとちゃんとした画像を作るかもしれない)
筥迫を手作りする_e0367602_16450597.jpg


本体の横幅は、お手本にした筥迫の寸法は12cmだったので、12cmにする予定で、画像にもそう書いているのだが、家にある厚紙が足りなかったので5mm短くして作った。
なので、私の完成写真とは微妙な印象の差が出るかもしれない。

マチも、1cmでつけたが、ちょっと薄かったかなあとも思うので、(かんざしが乗せにくい)自由に変えてほしい。その際は、留め具の輪っかの長さも長くする。


●素体を作る
フタから本体部分まで、一続きに裁断した厚紙の上に、部位ごとに細かく裁断した厚紙を貼り付け、2枚重ねにする。
その際、マチの部分は貼らずに開ける。
厚紙に柄がある場合は、柄の面が内側になるように貼り、間にコピー用紙などの白い紙を挟むと、仕上がりに柄が透けない。裏地をつけるのを省略したい人は、内側になる面の全面に白い紙を貼ってもいいかもしれない。

糊がしっかり乾いたら、マチの部分に折り目をつける。
(定規を当てて折るとまっすぐ折れる)

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●キルト芯を裁断し、貼る
フタと背になる面だけ二枚重ねにしたが、仕上がりを見てもっとフワフワでもいいかなーと思ったので、そこはお好みでやってみてほしい。
キルト芯を裁断するときは、包みながら長さを測ること。
厚紙を伸ばしたままで長さをとると、角のカーブにとられて足りなくなる。

このときについでに留め具にする分の厚紙(これも二枚重ねにする)とキルト芯を裁断しておいてもいいが、生地の厚さやキルト芯の厚さによって変わってくるので、かなりの余裕をもつか、本体が出来てからにするほうがいいかもしれない。

裁断したキルト芯は、両面テープか接着剤でちょこちょこと留めておくと作業がしやすい。



●布を貼る
作った素体を当てたり、巻いてみたりしながら、長さをみて表地を裁断し、アイロンで折り目をつけながら、布用接着剤で貼り付けていく。

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・フタになる面から貼っていく(出来上がったとき見えるのはここだけ)
・接着剤は紙やトレイやアルミホイルなどに出し、ヘラ状もので塗ると作業がしやすい
・角の布が重なるところは切る
・伸ばしたままではなく、マチを折って包んだりしながら様子を見て貼っていく
・細かいところにはピンセットを使う
・アイロンをあてると接着剤がはやく乾く(焦がしたり接着剤がアイロンに付いたりしないように気をつけよう)

など、綺麗に仕上げるコツにはいろいろ気付かされたが、お細工物の基本と言えばそんな気もする。

両面テープは便利だが、多用すると後で側面を糸でかがるときにベタついて縫いにくい。乾けば接着剤のほうが強いので、補助的にたまに使う。

筥迫を手作りする_e0367602_17151962.jpg


家にあった金襴のはぎれを利用した筥迫を、同時進行で作っている。
はがれやすいところは洗濯ばさみなどで留めて乾かす。(洗濯ばさみ跡に注意)



だいたい、ここらへんまで作ると疲れると思う。
接着剤をしっかり乾かして落ち着かせたほうがいいので、一息入れるか、続きは翌日以降にする。



●裏地を貼る
接着剤が乾いたら、裏地を貼っていく。
気力的にもう無理だと思ったら、見えない場所なので省略する手もある。

貼る面に定規を当ててみて、一回り小さく寸法を決め、その大きさにコピー用紙を切り、それを基準にして布を裁断する。アイロンで折り目をつけるときも、そのコピー用紙をあてながらすると楽だ。

仕上がりはこんな感じ。(写真は次の留め具も出来ている)
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フタになる面と、その反対側の面にだけ、例のコピー用紙を切って中に仕込んである。作業がしやすいのと、布が薄いので単体だと下が透けるからだ。
全面に入れてもいい気もするけど、たぶん、カーブのところがもたつくんじゃないかなあと思う。

最終的に見えるのはフタの面だけなので、裏地もフタのほうから貼っていく。
接着剤はある程度ベラっとまんべんなく塗ったほうがいいけれど、ケチったほうが早く乾く。端さえきちんと付いていれば、あとはズレない程度の量で十分なので、さじ加減でやろう。
折り目に無理がきてシワになるが、アイロンを当てて乾かすと、わりとなんとかなる。



●留め具の輪っかを作る
市販の花嫁セットの筥迫は、留め具がないものもある。撮影用にそれっぽいものがあればいいや、って人は作らなくてもいいかもしれない。ただし、びらびらかんざしを付けたい人は必須だ。

本体の外周の長さを測る。ちょっとはみ出すくらいに長さを決める。
出来上がりはだいたいこれくらいのはみ出し加減。
筥迫を手作りする_e0367602_18015253.jpg

幅は3cm。
厚紙を裁断し、本体同様2枚重ねにして貼り合わせる。
糊が乾いたら、本体に巻いてみてカーブをつける。
キルト芯も布も、曲げた上に巻いてみて裁断する。思ったより外周にとられるので、長さには余裕をもっておく。
本体の時と同じ要領で、キルト芯を包んで布を貼りつける。
裏地は、本体の時より大きめに、ギリギリまで貼る。

出来た留め具に目打ちで穴をあけ、紐を通して輪にする。
紐の通し方は、お手本の写真を載せておく。
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二本取り(二つ折り)にした紐を、それぞれの穴に通し(輪にしたほうから通す)、出てきた紐の輪部分に、余り分をくぐらせて留めてある…と思う。

この紐の先に、写真のように守り袋をつけるのが一般的なようだが、白無垢のほうは省略した。金襴の方だけ作った。

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びらびらかんざしを付けるので、かんざし入れも適当に作った。(縫い代を畳んで二つ折りにして2辺をかがる)
かんざしは、はこせこの上辺に乗せて、留め具で挟む。
なので、かんざしをつけるには、輪っかの長辺をちょっと長く作る必要がある(…と思う。それとも紐で調節するのかな)。金襴地のほうは、私はかんざし無し用と有り用で替えを作った。



●本体の側面をかがる
留め具を作る前でもいいが、本体の側面を”千鳥がけ”でかがる。
裏地も輪っかも省略した人も、この作業はやったほうがいいと思う。
写真には写っていないのだが、ラメの入ったレース糸を使ってみた。かわいいかなと思って。

千鳥がけの詳しいやり方については、私もYouTubeで調べた。
糸の端は、接着剤をつけて裏地の隙間に入れ込んで隠す。写真は、縫い始めを下段から始めているが、上段からのほうがいいようだ。

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上の段に、まず下から上に針を出し、糸を引いて、今度は下の段に、下から上に針を出す。
その時に、針を糸より左側に出して、糸を一回絡ませる。絡ませないと、ただのまつり縫いになる。変だなと思ったら絡ませてみたら解決すると思う。
これを端まで繰り返し、糸の端は接着剤をつけて裏地の隙間に入れ込んで隠す。



完成!
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(実は、金襴のほうは、手頃な紐が近所で手に入らなくて、まだ留め具を完成させていなかったりする。白のほうには、レース糸を鎖編みにした紐を通している)


びらびらかんざしは、アンティークのもの。
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似たような値段の新品と悩んだが、筥迫は振袖を着たときにいつも使っているし、この先も使えるので、アンティークを買った。
蝶と菊の彫金が細かくてとてもかわいい。



不親切なわりに冗長な説明で恐縮です。
たぶん、この説明で作れる人は、私の説明がなくても作れると思う。

「簡単」とは言えない手のかかるものだが、これでもかなり簡易版の筥迫らしく、世の中には、中に鏡が仕込んである筥迫とか、パイピングが施されたものとか、豪奢な刺繍で飾られたものとか、手の込んだ筥迫がいっぱいあるらしい。

実際筥迫は、実用性はほぼなくて、かわいいことが主な役割だ。
私も、何かを入れて使うことはない。
理由は、中に入れた物が取り出しにくいから。
物入れとしての機能は期待しないほうがいい。

ただ、見た目がかわいいことにはもうめちゃくちゃかわいいものなので、完成したときの満足度は高い。(「やばいめっちゃかわいい。わたし天才じゃね?」って思った)

初めは無精して買うつもりだったけれど、作ることにして良かったなあと今は思う。
使った生地も、写真に撮って改めて思ったが、高級感があってすごく良かった。
(やばい、やっぱりわたし天才かもしれない)
この生地については次回も使うのでそこで紹介するが、筥迫を作るには向いていたと思う。

ただ、次回紹介予定の「抱え帯」と「丸ぐけの帯締め」には向かなかったようで、作るのが大変だった。こちらも、すごく高級感が出たのは良かったんだけど。

というわけで次回は今回に引き続き、花嫁セットのなかのアイテムから
「抱え帯」と「丸ぐけの帯締め」を紹介する。



ところで、筥迫は本来は懐紙入れなんだし、懐紙をふところにそのまま入れるんで良いんじゃないかなーと、初めの初めは思っていた。
……ダメなのかなあ。
その場合は露出させずになかに入れるのかな。

平安装束の着付けでは直で入れてるけど、それも平安時代からそうとは限らないしなあ。うーん。

by tazutahara | 2017-01-29 17:09 | セルフ和装ソロウェディング