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白無垢綿帽子に憧れたアラサーのセルフ和装ソロウェディングレポート


by namino

綿帽子を手作りする

綿帽子を手作りする_e0367602_22532455.jpg



今日の話題は、綿帽子。
写真は、手作りの綿帽子を、文金高島田の「おしまさん」にかぶってもらったところ。

この綿帽子が、ソロウェディングを自力でやることになった原因の一つでもあることは、「自力でやろうと思った理由」にも書いた。



私は、最近流行りのワイヤーで補強した綿帽子に、どうも違和感を感じる。
美意識に反すると言ってもいいかもしれない。
私にとっては、あれは綿帽子とは呼べないものだ。(個人の意見です)
昔ながらの、ふんわりやわらかい綿帽子じゃなきゃ、綿帽子じゃないのだ。(個人の意見です)

写真を撮るには、シワも出ないし顔もよく見えるから、いまどきの綿帽子の方が好都合なのかもしれない。洋髪でもかぶれるし。フォト婚流行りだから、かんざしがなくても自立する綿帽子は、手軽で便利なのかもしれない。

でもやっぱり、私にとっての綿帽子は、丸くないのだ。
布に浮かんだシワから、向こう側の日本髪やかんざしの形が想像出来なくちゃダメなのだ。
姉さん被りだって、お高祖頭巾だって、中に日本髪が入っているからいいのだ。
そうじゃなくっちゃダメなのだ。

(中略)そんなこんなのこだわりで、自作することにした。

参考にしたのは、前述の記事でも紹介した、名古屋の貸衣装「北徳」の綿帽子だ。
ブログなどに掲載されているお客様写真を見て、全体像を想像し、自分のかつらと見比べながら大きさのあたりをつけ、何度か試作をした。たぶん合ってると思うんだけれど、なにか違うところがあったら教えてほしい。

せっかく苦心して作った寸法なので、もしかしたら誰か役立てたい人がいるかもしれないし、公開したいと思う。
とはいえ和裁も洋裁も学んだことがないし、製図とか出来ないマンなので、チラシで作った型紙を方眼紙に写して座標をとった。(単位はcm)

綿帽子を手作りする_e0367602_21173176.jpeg


※この綿帽子は、大きくしっかり結ったかつら(日本髪)に、花嫁用のかんざしを挿したうえで装用するものです。それらがないと形になりません。ワイヤーで補強する前提で作られた、丸い綿帽子とは違うものですから気をつけて下さい。

ノートの落書きレベルの画像で申し訳ない。
技術さえあったらプリントして使えるPDFとか作りたいんだけど、ちょっと今まともなPC環境を作っていなくて、無理だった。ごめんな役立たずで……。
できあがり寸法はだいたい縦が57cm、横が98cm。
直線のところが中心線なので、わにして作ってほしい。
途中に引いてある横線が、前身頃(って帽子の場合も言うのかな)のできあがり線なので、型紙は折り返して共通で使える。

できあがりはこんな感じ。
資料として、中古の綿帽子も買ってみたので、ついでに比べてみる。

綿帽子を手作りする_e0367602_22532446.jpg


←作ったやつ  買ったやつ→

かぶるときに、ちょっと後ろにずっこけさせる(方言かなあ)ので、後ろはあまり長くせずに作った。もしかしたら同じ長さにしても良かったのかもしれない。どうなんだろう。
北徳の綿帽子は、後ろ姿の写真が探せなかったんだけれど、もうちょっと長い気がした。



作り方を、こんどは詳しく説明しようと思って、途中経過の写真を撮ろうと思ったんだけれど、印付けも裁ち方も縫い目もあまりにお粗末すぎてとても見せられない有様だったので、諦めた。簡単に手順だけ書いておく。

・印付けをして裁断する。このとき、縫い代は多めにしておき、縫い合わせてから1cmくらいに切り落とす。
・表地を中表に合わせ、上辺の丸いところを縫う。縫い代は割る。
・前と後ろのそれぞれに、裏地を中表に合わせ、下辺を縫う。
(表地を縫い合わせるよりこっちが先のような気もする)
・表に返してアイロンをかける。まだ縫っていない裏地の上辺は、引いた線より2mm内側をアイロンで折る。
・折った裏地の上辺を、表にひびかないよう、縫い代部分のみに縫い付ける
・全体にアイロンをかけ、前身頃の中心にアイロンで折り線をつける



使った布は、
「ポリエステル羽二重 アルフォンシーヌ54」のオフホワイト。
このショップで買った。
表地も裏地もこれを使った。
裏地用の生地だが、表地にこれ以上しっかりした布を選ぶと、ポリエステルなので、張りが出てふんわりしない恐れがあると思った。

思った以上に透けないし、質感も高級感があって、それは良かったんだけれども、表も裏もこれだと、するする滑るし薄いしで、めちゃくちゃ縫いにくかった……。
縫製は手縫い。鬼のようにまち針をうった。カーブなんかもう2センチ刻みくらい。手持ちのまち針を全部使った。
それなのにズレる。
途中何度も、素材選び失敗したなと感じたが、出来上がってのふんわり感は狙い通りだった。撮ろうとするとカメラのディスプレイにモアレが出るんだけど、写りはどうかな……分からないくらいかもしれない。


焦らしていた全体像がこちら
(写り込む背景の生活感が隠しきれなくなってきた)

綿帽子を手作りする_e0367602_22532591.jpg



これが私の言う綿帽子! 綿帽子です!!!!

ひょっとして人間がかぶるとまた様子が変わるかもしれないから、その場合は修正するかもしれない。



とにかくこれで、身につけるものは全部そろった。
「懐剣がないじゃないか」と思った方がいたとしたら、なかなか鋭い。(というか、全部読んで下さってありがとう)

今回、私は懐剣を省略することにした。
理由は、あるブログ記事を読んで、それもそうだなと思ったから。

八千代ウェディングという、和の結婚式(和婚)のプロデュースをしている会社のブログ、「やちよごのみ」を読んでいて、こんな記事を見つけた。


なるほどそうだなあと思った。
私は体格が小さくなで肩で、胸元にあんまりスペースがない(ものは言いよう)ので、懐剣まで入れるのは無理だなあと思ったのもある。なるべくすっきりさせたくて、無しでいくことにした。
筥迫を作ったのは、筥迫が、というか、筥迫の上に飾るびらびらかんざしが好きだから。
「筥迫を手作りする」の時にも書いたんだけれど、「花嫁衣装に使われる小物には伝統があって…」みたいな説明が、私はあんまり好きじゃない。「誰かが作った宣伝文句でしょ」みたいなうさんくささを感じてしまう。
それを聞いて、「へえそうなんですか~」と疑いもせず、花嫁セットの小物はどれも絶対に無くてはならない伝統のものだと信じてしまうほうも、浅はかというか、頭が固いぞっていうか、私はだまされないからな! という感じ。

白無垢が白いのもさあ、「白だったら染め変えがきくから」だと思うんだよね。

花嫁は一度死んで嫁に行くとか、この世の存在じゃないとか、いろいろ言われているし、お色直しをして婚家の色に染まるとか、どれも一理あるなーそうなんだろうなーとは思うんだけれど、後付けっぽさも感じてしまう。決めごとってだいたい実用の上に成り立っているもので、「白にしておけばその後の使い道がある」という実用的な理由もあるんじゃないかと私は思う。染めの分まで生地に回せば、それだけ良い物が買えるのだし。

なんたって布は、古くは通貨だ。

「一生一度の品だからこそ白のままにする」みたいな美学もあるだろう。白い分だけごまかしもきかない。
嫁入りのための衣装だから、最高の布、最高の白を選ぶのであって、純潔の象徴とかではないんじゃないかと……



……何の話だったんだっけ。

衣装はみんな揃ったので、いつでも撮影出来る状態なのだが、着付けと撮影を頼んだ母と姉や、場所を提供してくれる祖母の都合なんかもあるので、現在は日程の調整中だ。

白無垢に似合うメイクの話とか、着物と打掛の丈の話とか、制作中の大道具の話とか、そんな話題もあるので、それまでぼちぼち更新していきたい。



おまけ。
花嫁かんざしを全部さしたおしまさん。
綿帽子を手作りする_e0367602_22532310.jpg

「おしまさん綺麗ねえ」って、思わず口に出して褒めた。

# by tazutahara | 2017-02-03 23:16 | セルフ和装ソロウェディング
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前回の「筥迫を手作りする」に引き続き、手作りしたものを紹介する。
花嫁セットの中のアイテム、「抱え帯(抱え帯)」と「丸ぐけの帯締め」だ。

「抱え帯」も、「丸ぐけ帯締め」も、前回紹介した筥迫工房さんで教本が販売されているようなので、今回もURLを載せておく。本気の人はそっちへ行くほうがためになると思う。



ただし、私は作り方を見ながら何かを作るというのが苦手なので、ここも、これから先で紹介するページも、見るだけざっと見て、あとは自己流で適当に作った。私の説明はあんまり信用しないでほしい。




●抱え帯
帯の下のほうに結ぶ、細長い帯のこと。
詳しいことはコトバンクの記述を読んで知ったほうがためになると思う。

辞書の中で、親切にも寸法まで説明されているので、あんまり説明するところはないのだが、私は厚紙で小さな型紙を作って、それを使って印付けをしたので、その写真を載せておく。

こういう感じのもの。ティッシュの空き箱でできている。

抱え帯と丸ぐけ紐をつくる_e0367602_13450676.jpeg


※実際に装着してみたところ、抱え帯は十二分に長さがあり、丸ぐけのほうはちょうど良いくらいかなと思った。(私は身長150cmのやせ形で、体格は小さい部類)

型紙は輪にするようになっているので、厚紙で引いた外の線が縫い線になる。
くけて(※後述)作るのが本式だと思うが、中表に縫ってひっくり返し、端を綴じた。
その際、何ミリか”きせ”をかける。(「きせをかける」でぐぐってほしい)

薄手の接着芯(百均)を、縫い線の内側部分にだけ貼ったのだが、ひっくり返す時なんかに中で剥がれる心配があるので、もっと大きくして縫い線の外まで全面に貼ってしまうか、接着芯の継ぎ目に布用接着剤を併用するとか、ちょっと縫い留めておくとか、した方が安全だ。
私は、返すのに使った物差しを最後に抜く時に、この継ぎ目でひっかけて剥がしてしまった。しかもそれが真ん中のあたりで、2m65cmの筒なので、手も届かなくて、かなり焦った。気をつけよう。

反物を使ったので、接がずに作れた。が、接ぐとしたらどのあたりだろう……二周巻くから3分の1らへん…? いや、接がないで作るものなのかもしれないけど、こんな細い物作るのに2m65cmも布買っていられないよね。
袋帯を締める機会があったら、胴回りを測っておくと目安になっていいかもしれない。正月に振袖を着たばかりだったので、しまった測っとくんだったー! と後悔した。




●丸ぐけの帯締め
「丸ぐけ」というのは、和裁の技法に「くける」というのがあって、洋裁ならまつり縫いで綴じるような箇所を、合わせた布の内側で運針して、表に糸を見せないで綴じる縫い方なのだが、その方法で布を細く筒状にして、中に綿を詰めて作った紐を「丸ぐけ紐」という。

かつては、帯締めといえばこの丸ぐけ紐だったとか。
現代のような組紐の帯締めは、明治になって廃刀の時代となり、武士の刀の下げ緒を作っていた組紐の職人が出番がなくなって、代わりに作るようになって普及したとか聞いたことがある。

時代劇を見ると、武家の奥方やお嬢様なんかが、この丸ぐけの帯締めを締めている。(庶民の間では帯締めをかけない結び方が一般的)
この、文庫結びにかけた白い丸ぐけ紐は、少女期に私が憧れたものの一つだ。
髷の上にかわいい色の打ち紐を結んだ島田と、懐剣と、文庫結びに丸ぐけ紐……島田の根にかけた丈長の清々しさなんかも含めて、この「武家のお嬢様スタイル」が憧れだった。腰元の、立て矢に結んだ黒の帯に白い丸ぐけ紐がかかっているのも好きだった。

長くなるといけないので、そろそろ本題。
丸ぐけの帯締めは作っておられる方がいて、私もそこを参考にしたので、リンクしておく。



※以降何回かに分けて作り方が紹介されている


寸法については、ちょっとアレンジした。さっきの型紙の画像に一緒に写してある。幅4.3cm。長さは1m65cmに決めた。丸ぐけ紐は伸びないので、組紐の帯締めよりも長さが要るという記述が参考にしたページにある。加減してみてほしい。直径は、1cmより若干大きい。
こちらの型紙は輪にせず、厚紙の両端の線が縫い線になる。

近所に鞄の持ち手芯が売ってなかったのと、くけるのが下手なので、一つめのページのミシンで作るやり方のほうを採用した。芯は、ダイソーの太い毛糸を6本取りにした。

抱え帯と丸ぐけ紐をつくる_e0367602_23494662.jpg


しっかりみっちりさせようとすると、この毛糸が6本も入ってしまう。入れていくうちに摩擦が大きくなってくるので、だれかに助手を頼むとはかどる。

ミシンで縫うところまではスムーズだったのだが、ひっくり返すのがえらい大変だった。接着心を貼っていた(こちらは縫い線の外まで全面に貼った)のと、生地の摩擦が半端なくて、全然ひっくり返らなかった。だから、素材によっては、鞄の持ち手芯にくけて作る二つ目のやり方のほうが楽かもしれない。




出来たものがこちら。

抱え帯と丸ぐけ紐をつくる_e0367602_00284120.jpg


この二つを作るのに、前の晩に印付けと裁断、翌日昼間に縫製と仕上げで、わりと一日仕事だった。でも、要領のいい方ならもっと手早く作れると思う。(私はめちゃくちゃどんくさい)

何が大変だったかって、選んだ素材が曲者だった。
これらを手作りすることにしたのは、「自力でやろうと思った理由」でも触れたが、

胡蝶花舞台オフィシャルホームページ 胡蝶をどり日記

このページに触発されたところが大きい。
どうせ作るなら、私も生地に凝りたいなーと思った。

抱え帯と丸ぐけ紐をつくる_e0367602_00284136.jpeg


それで探して見つけたのが、この白生地だった。
ヤフオクで、送料入れても千円弱で買えた。ラッキーだったと思う。
羽織用(羽尺)の反物で、これから染めて使う用途の布らしい。布って、染めると染料でいたむので、薄くなるんだそうだ。(母が教えてくれた)これは染める前なので、生地がしっかりしていた。

裁つときには扱いやすかったんだけれど、用途には適さなかったかもしれない。
というか、さっきのページでも「綸子」って書いてあるんだから、そういう生地を探せばいいのに、どうして縮緬地とか買っちゃうんだろう。
チュッチュッと鳴るあの絹特有の摩擦がすごくて、縮緬のシボ同士がひっかかって、そのうえ厚くてしっかりしているので、抱え帯も丸ぐけも、ひっくり返すのが大変だった……。

でも、結果としてはちゃんと完成したし、とっても高級感が出たので良しとする。この柄が気に入って買ったんだし。
おすすめとしては、もうちょっと薄手で、摩擦の少ない生地が作りやすいと思う。
着付ける人も、結ぶときに結びやすいかもしれない。



この生地はまだ残っていて、他のものにも活用したいなーと思っている。
まずは、洗ってみて縮まないようなら半襟にしようかなあ。
染めて加工するのもアリかな……どんな染料使ったらいいんだろう。

何か、作ったことのないものに挑戦するのは大好きなので、白無垢綿帽子計画は、そういう挑戦がいっぱいあって楽しい。

作業に飽きたり疲れたりすると、
「なんで本当に結婚するんでもないのにこんなに頑張っているんだろう」
みたいな虚しさがこみ上げる瞬間も、ある。
でも、筥迫が完成したあたりから、開き直ったというか、楽しさのほうが勝るようになってきた。(抱え帯と丸ぐけ→筥迫・同時進行で綿帽子…みたいな順で作った)

コスプレをやめてから、特に就職してからは、何かを作るってことをあまりしていなかったのだけれど、今回の計画がきっかけで、久しぶりに手芸の楽しさを味合えた。

コスは、あるとき「これじゃないな」と思ってやめたのだが、今回のことは「これだな!」って感じがしていて、たぶん、なんだかんだ私は一生こういうことがやめられないで過ごすんだろうなーという気がする。
(「こういうこと」って、説明するなら何になるんだろう。「時代扮装」だと、限定しすぎな気がするし、自分で用意するところからやることに意味があるので、ただ着たいだけの欲求じゃない。何なんだろう)

願わくばいつかこれが渡世の手段になればいいなと思うのだけれど、好きなことばっかりして生きられるものでもないしな……。



次なる手作り品の紹介は、「綿帽子」の予定。
私のセルフソロウェディングの引き金になった品だ。試作を重ねて製作した。



ちなみに、冒頭で載せた写真は、家人が仕事に行っている間に、自分で着付けて(帯は後ろで垂らしたまま)、三脚をたてて、シャッターリモコンで撮影した。えらい大変だった。
毎度思うけど、私がもう一人ほしい……。

写真には毎回もっと凝りたいなーという熱意だけはあるんだけれど、あんまり写真だけ綺麗でもレンポジ使ったみたいで現実味がないので、こんなもんかなあ。

# by tazutahara | 2017-01-31 16:44 | セルフ和装ソロウェディング

筥迫を手作りする

筥迫を手作りする_e0367602_17032446.jpeg


写真は私がもともと持っていた筥迫(はこせこ)。
姉が誕生日にプレゼントしてくれたお気に入りのものだ。

花嫁の衣装には、現代ではあまり使わない小物が使われている。
今回のメインの筥迫や、次回以降で紹介する予定の抱え帯や丸ぐけの帯締め、懐剣などは、普段の和装ではあまり使われない小物だ。
花嫁衣装は伝統の衣装なので、古くから伝わるこれらの小物が使われる……みたいな説明はよく見かけるが、どこか定型句っぽいというか、宣伝文句的というか、「そういうことになっている」みたいな匂いを感じて、個人的にはどうかなあと思う部分もある。
(江戸期以降の風習を「わりと最近の発祥なんだな」と感じる人間の意見である)

ともあれ、筥迫がそこそこ歴史のある装身具であるということは、どうもそうらしい。
原型は懐紙入れだったと聞いたことがあるが、聞きかじりの知識ばかりで、詳しいことは私も知らない。七五三の着物にも使われるので、案外みんな知らない間に使った経験があるものかもしれない。

筥迫については、私なんかの説明よりも、『筥迫工房』さんのHPと、そのブログに行くほうがよほど勉強になる。教本も販売されているので、本気の人はぜひそちらに行ってほしい。


調べてないけど、ハンドメイドの作家もけっこういるんじゃないだろうか。たぶん。


この筥迫や、抱え帯や丸ぐけの帯締めなんかがセットになったものが、花嫁セットみたいな名前で売られていて、中古のものを私もヤフオクで見かけたが、人気が高かったので競り落とすのを諦めた。
私が買うよりは、もっと必要としている人のほうに回るほうが良いなと思って。

お手本もあることだし、手作りすることにした。

私は教本を見て何かを作ることが基本的に出来ないタイプだ。
作り方は自己流なので、あまり信用せずに、変だなと思ったらご自身の判断で変更してほしい。
パイピングとか、刺繍とか、そういう難しいことは、出来ないのでしていない。
かなり簡易版の筥迫だ。



【材料と道具】
・布(表地用と裏地用を用意する)
・厚紙(お菓子の箱やティッシュ箱の底など)
・コピー用紙
・キルト芯(百均)
・レース糸(百均)
・紐(レース糸を流用できないこともないが、もっと太い方がいい)
・布用接着剤(『布上手』という商品を使った)
・両面テープ
・スティックのり
・カッター
・はさみ
・カッティングマット
・金属定規と普通の定規(カッター裁断用と線引くとき用)
・シャーペン
・チャコ
・アイロン
・洗濯ばさみ  など


ほとんどがハサミで切って接着剤で貼る作業になるので、裁縫っぽさはない。工作に近い。
細かい作業が多くて飽きるし、手も接着剤でベタベタになるしので、何日かに分けてちまちま作るのがいいと思う。乾かす時間をおいたほうが、接着剤も落ち着く。
ちなみに私は、日を空けながら10日くらいかけて作った。(飽き性)

●最初に切る厚紙の寸法
(そのうちpdfかなんかで、もっとちゃんとした画像を作るかもしれない)
筥迫を手作りする_e0367602_16450597.jpg


本体の横幅は、お手本にした筥迫の寸法は12cmだったので、12cmにする予定で、画像にもそう書いているのだが、家にある厚紙が足りなかったので5mm短くして作った。
なので、私の完成写真とは微妙な印象の差が出るかもしれない。

マチも、1cmでつけたが、ちょっと薄かったかなあとも思うので、(かんざしが乗せにくい)自由に変えてほしい。その際は、留め具の輪っかの長さも長くする。


●素体を作る
フタから本体部分まで、一続きに裁断した厚紙の上に、部位ごとに細かく裁断した厚紙を貼り付け、2枚重ねにする。
その際、マチの部分は貼らずに開ける。
厚紙に柄がある場合は、柄の面が内側になるように貼り、間にコピー用紙などの白い紙を挟むと、仕上がりに柄が透けない。裏地をつけるのを省略したい人は、内側になる面の全面に白い紙を貼ってもいいかもしれない。

糊がしっかり乾いたら、マチの部分に折り目をつける。
(定規を当てて折るとまっすぐ折れる)

筥迫を手作りする_e0367602_17151990.jpg 筥迫を手作りする_e0367602_17151826.jpg


●キルト芯を裁断し、貼る
フタと背になる面だけ二枚重ねにしたが、仕上がりを見てもっとフワフワでもいいかなーと思ったので、そこはお好みでやってみてほしい。
キルト芯を裁断するときは、包みながら長さを測ること。
厚紙を伸ばしたままで長さをとると、角のカーブにとられて足りなくなる。

このときについでに留め具にする分の厚紙(これも二枚重ねにする)とキルト芯を裁断しておいてもいいが、生地の厚さやキルト芯の厚さによって変わってくるので、かなりの余裕をもつか、本体が出来てからにするほうがいいかもしれない。

裁断したキルト芯は、両面テープか接着剤でちょこちょこと留めておくと作業がしやすい。



●布を貼る
作った素体を当てたり、巻いてみたりしながら、長さをみて表地を裁断し、アイロンで折り目をつけながら、布用接着剤で貼り付けていく。

筥迫を手作りする_e0367602_17151963.jpg


・フタになる面から貼っていく(出来上がったとき見えるのはここだけ)
・接着剤は紙やトレイやアルミホイルなどに出し、ヘラ状もので塗ると作業がしやすい
・角の布が重なるところは切る
・伸ばしたままではなく、マチを折って包んだりしながら様子を見て貼っていく
・細かいところにはピンセットを使う
・アイロンをあてると接着剤がはやく乾く(焦がしたり接着剤がアイロンに付いたりしないように気をつけよう)

など、綺麗に仕上げるコツにはいろいろ気付かされたが、お細工物の基本と言えばそんな気もする。

両面テープは便利だが、多用すると後で側面を糸でかがるときにベタついて縫いにくい。乾けば接着剤のほうが強いので、補助的にたまに使う。

筥迫を手作りする_e0367602_17151962.jpg


家にあった金襴のはぎれを利用した筥迫を、同時進行で作っている。
はがれやすいところは洗濯ばさみなどで留めて乾かす。(洗濯ばさみ跡に注意)



だいたい、ここらへんまで作ると疲れると思う。
接着剤をしっかり乾かして落ち着かせたほうがいいので、一息入れるか、続きは翌日以降にする。



●裏地を貼る
接着剤が乾いたら、裏地を貼っていく。
気力的にもう無理だと思ったら、見えない場所なので省略する手もある。

貼る面に定規を当ててみて、一回り小さく寸法を決め、その大きさにコピー用紙を切り、それを基準にして布を裁断する。アイロンで折り目をつけるときも、そのコピー用紙をあてながらすると楽だ。

仕上がりはこんな感じ。(写真は次の留め具も出来ている)
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フタになる面と、その反対側の面にだけ、例のコピー用紙を切って中に仕込んである。作業がしやすいのと、布が薄いので単体だと下が透けるからだ。
全面に入れてもいい気もするけど、たぶん、カーブのところがもたつくんじゃないかなあと思う。

最終的に見えるのはフタの面だけなので、裏地もフタのほうから貼っていく。
接着剤はある程度ベラっとまんべんなく塗ったほうがいいけれど、ケチったほうが早く乾く。端さえきちんと付いていれば、あとはズレない程度の量で十分なので、さじ加減でやろう。
折り目に無理がきてシワになるが、アイロンを当てて乾かすと、わりとなんとかなる。



●留め具の輪っかを作る
市販の花嫁セットの筥迫は、留め具がないものもある。撮影用にそれっぽいものがあればいいや、って人は作らなくてもいいかもしれない。ただし、びらびらかんざしを付けたい人は必須だ。

本体の外周の長さを測る。ちょっとはみ出すくらいに長さを決める。
出来上がりはだいたいこれくらいのはみ出し加減。
筥迫を手作りする_e0367602_18015253.jpg

幅は3cm。
厚紙を裁断し、本体同様2枚重ねにして貼り合わせる。
糊が乾いたら、本体に巻いてみてカーブをつける。
キルト芯も布も、曲げた上に巻いてみて裁断する。思ったより外周にとられるので、長さには余裕をもっておく。
本体の時と同じ要領で、キルト芯を包んで布を貼りつける。
裏地は、本体の時より大きめに、ギリギリまで貼る。

出来た留め具に目打ちで穴をあけ、紐を通して輪にする。
紐の通し方は、お手本の写真を載せておく。
筥迫を手作りする_e0367602_18181724.jpg

二本取り(二つ折り)にした紐を、それぞれの穴に通し(輪にしたほうから通す)、出てきた紐の輪部分に、余り分をくぐらせて留めてある…と思う。

この紐の先に、写真のように守り袋をつけるのが一般的なようだが、白無垢のほうは省略した。金襴の方だけ作った。

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びらびらかんざしを付けるので、かんざし入れも適当に作った。(縫い代を畳んで二つ折りにして2辺をかがる)
かんざしは、はこせこの上辺に乗せて、留め具で挟む。
なので、かんざしをつけるには、輪っかの長辺をちょっと長く作る必要がある(…と思う。それとも紐で調節するのかな)。金襴地のほうは、私はかんざし無し用と有り用で替えを作った。



●本体の側面をかがる
留め具を作る前でもいいが、本体の側面を”千鳥がけ”でかがる。
裏地も輪っかも省略した人も、この作業はやったほうがいいと思う。
写真には写っていないのだが、ラメの入ったレース糸を使ってみた。かわいいかなと思って。

千鳥がけの詳しいやり方については、私もYouTubeで調べた。
糸の端は、接着剤をつけて裏地の隙間に入れ込んで隠す。写真は、縫い始めを下段から始めているが、上段からのほうがいいようだ。

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上の段に、まず下から上に針を出し、糸を引いて、今度は下の段に、下から上に針を出す。
その時に、針を糸より左側に出して、糸を一回絡ませる。絡ませないと、ただのまつり縫いになる。変だなと思ったら絡ませてみたら解決すると思う。
これを端まで繰り返し、糸の端は接着剤をつけて裏地の隙間に入れ込んで隠す。



完成!
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(実は、金襴のほうは、手頃な紐が近所で手に入らなくて、まだ留め具を完成させていなかったりする。白のほうには、レース糸を鎖編みにした紐を通している)


びらびらかんざしは、アンティークのもの。
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似たような値段の新品と悩んだが、筥迫は振袖を着たときにいつも使っているし、この先も使えるので、アンティークを買った。
蝶と菊の彫金が細かくてとてもかわいい。



不親切なわりに冗長な説明で恐縮です。
たぶん、この説明で作れる人は、私の説明がなくても作れると思う。

「簡単」とは言えない手のかかるものだが、これでもかなり簡易版の筥迫らしく、世の中には、中に鏡が仕込んである筥迫とか、パイピングが施されたものとか、豪奢な刺繍で飾られたものとか、手の込んだ筥迫がいっぱいあるらしい。

実際筥迫は、実用性はほぼなくて、かわいいことが主な役割だ。
私も、何かを入れて使うことはない。
理由は、中に入れた物が取り出しにくいから。
物入れとしての機能は期待しないほうがいい。

ただ、見た目がかわいいことにはもうめちゃくちゃかわいいものなので、完成したときの満足度は高い。(「やばいめっちゃかわいい。わたし天才じゃね?」って思った)

初めは無精して買うつもりだったけれど、作ることにして良かったなあと今は思う。
使った生地も、写真に撮って改めて思ったが、高級感があってすごく良かった。
(やばい、やっぱりわたし天才かもしれない)
この生地については次回も使うのでそこで紹介するが、筥迫を作るには向いていたと思う。

ただ、次回紹介予定の「抱え帯」と「丸ぐけの帯締め」には向かなかったようで、作るのが大変だった。こちらも、すごく高級感が出たのは良かったんだけど。

というわけで次回は今回に引き続き、花嫁セットのなかのアイテムから
「抱え帯」と「丸ぐけの帯締め」を紹介する。



ところで、筥迫は本来は懐紙入れなんだし、懐紙をふところにそのまま入れるんで良いんじゃないかなーと、初めの初めは思っていた。
……ダメなのかなあ。
その場合は露出させずになかに入れるのかな。

平安装束の着付けでは直で入れてるけど、それも平安時代からそうとは限らないしなあ。うーん。

# by tazutahara | 2017-01-29 17:09 | セルフ和装ソロウェディング
かつらが我が家にやってきた_e0367602_16361721.jpg


届いて一番テンションが上がったのがこれだろう。
我が家にやってきた文金高島田、「おしまさん」の写真だ。
島田髷だから、おしまさん。「おぶんさん」よりは、「おしまさん」がしっくりきた。

届いた日は、これをおかずに眺めてご飯を食べた。
いや、もちろんちゃんとお菜はあったんだけど、そう言ってもいいくらいずっと眺めていた。

夢とか憧れなんてものじゃない。
島田髷は私の宇宙だ。

日本髪のメジャーな髪型の中でも、島田は難しい。簡単には真似られない。
それも花嫁の島田は文金高島田といって、根(髷の根元)の位置がぐっと高いので、髷が高くそびえて見える。これがまた技術を要する。
私の日本髪への情熱については、前回・前々回の「かつらと日本髪の話」「地毛結いと日本髪の話」で語った。
今回はなるべく「おしまさん」のことに話題を絞りたい。

かつらが我が家にやってきた_e0367602_16543776.jpg


前挿しと櫛だけつけてみた。
当たり前だが、花嫁用のかんざしがよく似合う。



おしまさんは、ヤフオクで買った。
前回の、花嫁かつらの職人さんの動画(https://youtu.be/QXBXMuFW1nE)に感動した件と矛盾するようだが、私には予算の都合というものがある。
そこらへんのかつらをポンと持ってきてかぶった、ということになってしまうのは致し方ない。

おしまさんは、生え際が網になっている「網かつら」だ。
「網かつら」については、前回も紹介したこのページを読んでほしい。
 「地かつら」と「網かつら」の違い(http://blog.tatsumi-shokai.jp/?eid=9

おしまさんが届いて、初めてケースを開けたときは、ちょっと怖かった。人の頭を模した物って、やっぱり怖いのね。
たぶん、恐がりの人は触れないと思うし、家に置けないと思う。
私の場合は、日本髪への愛と情熱が勝った。

写真の時点で、少し古びた様子も見受けられたが、大きな型崩れなどはなく、元結や紙の飾りなんかもそろっていて、お買い得だった。(送料を入れて6500円くらい)
私好みのレトロですてきな花嫁かつらだ。

ホコリや、古くなった鬢付け油の塊などで汚れて見えたので、ピンセットでとったり、持っている結髪用の櫛で表面をそっと撫でたりして掃除した。
その後、艶を出そうと思って椿油で拭いたのだが、液状の油を加えたせいでダレたのか(鬢付け油は固形)、油が馴染んだころに後れ毛が出始めたので、おすすめしない。やっぱり鬢付け油も買うか、これ以上素人考えで何かするのはやめるべきか、悩むところだ。

あの、お前が言うなって話なんだけど、ほんと、素人が安易にかつら買っちゃダメだよ。後でも言うけど。ほんと、「お前が言うな」だけど、ダメだよ。



おしまさんは、実は私にはちょっと大きい。
買う前に、かつらメーカーのサイトだとか、見て研究はしたんだけれど、やっぱり具体的に想像するのは不可能だし、ぴったりのサイズが分かったとして、それが出品されるとは限らない。
おしまさんの出品ページにも、なんとなくのサイズは書いてあったので、頭のサイズを測ってみたのだが、その時点でちょっと大きい気はした。
が、現在はショートヘアなので、髪が伸びるとそれも変わってくる。小さかったら入らないけど大きい分には入るなと思って、比較的安かったのもあって、買うことにした。

確かにかつらの内のりは大きいのだけれど、髪型の大きさ自体は良い感じだったので、まあ良かったね、という感じだ。
私は、花嫁さんの頭は、イメージするところがちょっとレトロな路線なのもあって、大きく結ってあるといいなーと思っている。
だって、雛人形だって、頭が大きい方が豪華だ。



かつらの被り方・下地作りは、以下の動画を参考にした。
ちなみに私のかつらは、こんなふうに中の金属が動く構造にはなっていない。



私はショートヘアなので、ウィッグネットはそのままかぶれる。
鉢巻きは、粘着包帯で代用した。安価だし近所で買えるので。
(テーピングは髪の毛がくっつくからダメよ)

かつらの内のりが大きいので、かぶる際に中身を盛る必要があり、これにはタオルを使うことにした。そのために、ウィッグネットをもう一枚用意した。

まずウィッグネットを2枚とも首まで通し、1枚を普通にかぶる。
その上にタオルを置いて、上からもう1枚のウィッグネットをかぶる。
生え際に粘着包帯を巻いて完成だ。

長時間の装着に耐えられるかは疑問だが、私の場合は、ちょっと写真を撮る間乗っていてくれればいい。

ウィッグネットを2枚かぶる方法は、レイヤー時代、髪がロングだったころにやっていた。
まず普通にかぶって、まとまった長い髪をなんとなーく全体に巻いて、上からもう一枚かぶって、厚みを均一にならす。長い髪には水泳帽を使う方法などが有名だが、私はこの方法でどのメーカーのウィッグもかぶることが出来た。ファッションウィッグなどに使える技だと思う。
花嫁のかつらにはどうかなあ。かつらが重いから、髪が中で滑ってズレるリスクがあるかもしれない。

撮影の時には、ネットをかぶる前に生え際にマトメージュ(まとめ髪用の固形ワックス)を塗ろうと思っている。脱いだときの髪型が悲惨なことになるんだけど、私はもみあげが立派なので、後れ毛対策に。

かんざしは本来かぶってから挿すものなんだろうけど、挿してからかぶるんでも結構いけた。家族は、私ほどは日本髪マニアじゃないので、後から挿すんだと、事前に綿密なレクチャーが必要になる。かぶる前に私が挿しておく方向でも問題なさそうで良かった。
課題は、後挿しがうまく挿せないことだ。外して置いている状態でも、うまく挿せない。撮影までになんとかしたい。



最後に、さっきも少し言いかけたが、「安易にかつらを買うな」という話。

本当に「お前が言うな」なんだけど、日本髪ってとっても特殊なものなので、ましてやかつらを扱うって、専門技術なので、素人が安易に買うものじゃないです。

私は日本髪が好きで、髪型の違いが分かって、構造も結い方も分かる。
でも、それが分かっても結えないのが、鬢付け油を使う本物の日本髪。
日本髪ってすごいの。そしてかつらもすごい。

専門技術も持っていないのに、かつらを買ってしまったことについて、私は非常に罪深いものを感じていて、もしかつらをメンテナンスする専門技術を持った人がいきなり現れて、
「これはお前が持って良いものじゃない!」
と言われて取り上げられたとしても、「その通りです。すみませんでした」と言って献上してしまうかもしれないくらいに、申し訳なく思っている。
これは、花嫁でもないのに花嫁衣装を所持すること以上に、心苦しいこと。

なので、本当に、よく知らないで気軽に買うとかはやめたほうがいい。
私に言えたことじゃないけど。
どうかどうか、専門技術を持った人のアドバイスを受けた上で手にしてほしい。
私に言えたことじゃないけど。



でも日本髪が家にあるというのは、やっぱりとっても嬉しいことだ。
出しっぱなしにするとホコリがつくので、たまに開けてはニヤニヤ眺めたり、手持ちのかんざしを挿してみたりして楽しんでいる。



最近わが家が美しいのは、どこかに日本髪を隠しているから……かもしれない。

# by tazutahara | 2017-01-28 15:47 | セルフ和装ソロウェディング

かつらと日本髪の話



まずはこの動画を見てほしい。
私は感動してしまった。

以前は地毛結いの日本髪一辺倒だった私だが、最近はそうでもない。この動画や、後で紹介するかつらの結いあげの動画などを見ると、かつらってすごいな! と思わされる。

私の思う日本髪の”本物”については、前回「地毛結いと日本髪の話」で語った。
かつらは、鬢付け油を使って、専門の職人の手で結われている。
これだって日本髪の”本物”の一つだと私は思う。

人間の頭は、べつに、日本髪を結うために存在しているわけではない。
一方、日本髪のかつらは、日本髪を結うために存在している。

これって、日本髪好きとしては、ものすごく感動的なことだ。

日本髪を結うためだけに作られた存在がこの世にあるなんて……!

鬢(びん)も、前髪も、ほかすべての髪が、日本髪を形作るために植えられているだなんて、しじゅう日本髪のことを考えて過ごした青春を持つ私としては、ものすごいロマンを感じる。

人間の頭だったら、毛の流れや、髪質や、頭の形や、そんなもので上手くいかない箇所も出てくるかもしれないが、かつらにはそれがない。
だから、かつらは、日本髪の一つの究極系とも言えるかもしれない。



最近のかつらは、軽量化の努力がなされて、毛量も少なくなっているらしい。
それを綺麗に結いあげるには、相当の技術が必要だそうだ。

出典:以下の動画


うっとり見とれてしまう、すばらしい技術だ。
冒頭の動画の職人さんも、かつらには無駄な毛がないと語っていた。
日本髪を結うために、より高度な表現のために、かつらも結い手も進化してきたのだ。

昔のかつらは、「地かつら」と(今は)呼ばれるもので、生え際が不自然だった。それが、生え際にネットを使用した「網かつら」が考案されて、より自然になった。
参考:「地かつら」と「網かつら」の違い(http://blog.tatsumi-shokai.jp/?eid=9)

それから、地毛の生え際を活かして装着する「半かつら」というのもある。
これは、私が京都で舞妓さん体験をしたときの写真で、半かつらが使われている。

かつらと日本髪の話_e0367602_13055368.jpeg


現代では生かすところのない私の富士額と立派なもみあげも、この時ばかりは面目躍如だ。
(あと、この日の写真、どんな瞬間も私が隙なくドヤっていて、後で爆笑した)

最近の時代劇では、この半かつらがよく使われている。
中には「でこっぱちで可愛くない」と評している人もいて、たしかに、向き不向きはあるなあというか、例えば前田敦子あたりには網かつらがいいのじゃないかなーと思うが、私は好きだ。リアリティという点ではこれが一番だろう。

半かつらの装着動画も見たことがある。これもすごい。何がすごいって、ラストがすごい。
ちょっと衝撃的な映像だ。
URLだけ貼っておくので、興味があったら見てほしい。



一人の日本髪好きとして、日本髪という文化と技術が、現代に至るまで大切に守られてきたことは、本当に喜ばしいことだと思う。
歌舞伎や舞踊や時代劇といった芸能の世界とともに守られ、発展してきたというのもあるだろう。それに、花嫁の最高の装いとして尊ばれてきたことも、理由の一つなんじゃないだろうかと思う。

ステージやカメラの前に立つような人たちでなくとも、花嫁はみんな日本髪の姿になる。
その最高の装いのために、花嫁かつらが作られてきた。

と、話をすごーく感動的な方向にもっていこうとしていたら、自分が本物の花嫁じゃないことに気がついてしまった。しまったしまった。
でも、花嫁でなくても花嫁姿になれて、昔なら一生に一度だった格好が自由にできてしまうんだから、これはこれで感動的な話かもしれない。

花嫁のための支度を、何でも「最高の」みたいな言葉をつけて付けて持ち上げるのは、いやらしいというか、手垢がついた表現とも思うし、押しつけがましさみたいなものを感じて、好きじゃなかったんだけれど、自分で衣装を集めたり、作ったりしてみて、やっぱり花嫁の支度は特別で至高のものなんだなとも思うようになった。
(だからって、とりあえず「最高の」とか「特別な」とか付けとけばいいだろ、みたいな思考停止した発想はやっぱり嫌いだが)

とにかく、かつらは日本髪好きにとって、ものすごくロマンあふれる存在だということに、最近私は気がついた。
かつらがあったから、日本髪という文化は廃れずに残されてきたのだと思うし、そうやって日本髪専用の存在を生み出してしまうほど、日本人の日本髪への憧れは根強いものだったのだろうとも思う。

真似っこ日本髪も含めた”地毛結い”はブームだけれど、かつらだってすごい。

次回は、そんな「おかつら様」が我が家にやってきた話をする。

# by tazutahara | 2017-01-27 13:01 | セルフ和装ソロウェディング